東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)272号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。
二 原告ら主張の認定判断の誤り第2点について
1 成立について当事者間に争いのない甲第二号証の一(本願発明の特許出願公告公報(昭和五九年第九六九〇号))、甲第二号証の二(昭和六〇年一月一四日付手続補正書)によれば、本願明細書には、ごみ類掻上片2について、次の趣旨の記載があることが認められる(以下別紙第一図参照)。
(一) 「前記ごみ類掻上片2が、前記バースクリーン1のバー間隙中に挿入されて走行される櫛状のすきとり部aと、該すきとり部aと反対方向即ち水路上流側に突設される櫛状の掻上爪片bとを備えたレーキであ」る(甲第二号証の二の別紙の一枚目の特許請求の範囲の本文一五行から二枚目一行まで)。
(二) 「バースクリーン1の末端は水路底面から離れた上方位置で終わつており水路底部より間隔をあけた位置に彎曲部1があるように設置され、その間隔にごみ類掻上片2が通過して即ちバースクリーン1の彎曲部1にごみ類掻上片2が沿つて移動しバースクリーン1に目詰りしたごみ類を掻き上げるようにし、ごみ類の下流側への逸出を可及的に少なくするようにしてある。」(甲第二号証の一の二頁3欄三五行から四二行まで)
(三) チエーンローラ3が循環回動するので、「掻上片2も移動し、バースクリーン1上をすきとるように上昇しスクリーンで捕捉したごみをバー間隙のごみをすきとり部aですきとるとともに掻上爪片bで掻き取つて水上に運び出してエプロンコンベア21上に落下搬出させるものである。」(甲第二号証の一の二頁4欄二九行から三四行まで)
(四) ごみ類掻上片2が、前記(一)のような「レーキであつて、該掻上片2の裏側に備えた支持部材7にアタツチメント71を介してチエーンローラ3を着脱自在に設けたことにより、掻上片の掻上爪片で持ち上げられる課程並びに持ち上げられたごみ類の絡みつきがよく脱落防止と、水面上に持ち上げられた際の脱水性とを良好に行なえると共に、スクリーンバー間のスリツトに挟まつたごみ類をすきとつて掻上爪片側に押し出して持ち上げられスクリーンの清掃によつて水流抵抗を増加することなく、バースクリーンの上流側前面及びバー間隙に引掛かつた水流中のごみを大量に能率よく掻上げ、搬出することができ掻上片で掻き上げたごみ類の脱落が少なくシユートへの反転投入の際には滑り落ちが容易であるし掻上片の設置が簡易で補修、更新も容易となり軽量化が可能で運行支障とならず安定した操作ができる。」(甲第二号証の一の三頁5欄六行から6欄五行まで)
2 右認定の事実によれば、本願発明のごみ類掻上片2は、「バースクリーン1のバー間隙中に挿入されて走行される櫛状のすきとり部aと、該すきとり部aと反対方向即ち水路上流側に突設される櫛状の掻上爪片bとを備えたレーキ」であるところ、その作用効果は、水路底部のバースクリーン1の彎曲部1に沿つて移動しバースクリーン1に目詰りしたごみ類を掻き上げるようにし、さらに、バースクリーン1上をすきとるように上昇してバースクリーンのバー間隙及びバースクリーンの上流側前面に引掛かつた水流中のごみを、バー間隙のごみはすきとり部aですきとり、櫛状の掻上爪片b側に押し出すとともに、バースクリーンの上流側前面に引掛かつた水流中のごみは櫛状の掻上爪片bで掻き取つて、それらを水上に運び出してシユート20へ投入し、エプロンコンペア21上に落下搬出させるものであり、櫛状の掻上爪片bで水中を掻き取られる過程及び水面から上へ持ち上げられる際ごみ類の絡みつきがよくごみ類の脱落を防止でき、水面上に持ち上げられたごみ類の脱水が良好に行えると共に、シユートへの反転投入の際には滑り落ちが容易であるというものであると認められる。
そして、右ごみ類掻上片2が備える掻上爪片bは、櫛状のすきとり部aと反対方向、即ち、水路上流側に突設された櫛状のものであり、その作用効果は、バースクリーンの上流側前面に引掛かつた水流中のごみを掻き取つて、それらを水上に運び出してシユート20へ投入し、エプロンコンベア21上に落下搬出させるものであり、櫛状の掻上爪片bで水中を掻き取られる過程及び水面から上へ持ち上げられる際ごみ類の絡みつきがよく、ごみ類の脱落を防止でき、水面上に持ち上げられたごみ類の脱水が良好に行えると共に、シユートへの反転投入の際には滑り落ちが容易であるという点にあるものと認められる。
したがつて、本願発明の掻上爪片bは、櫛状のすきとり部aと反対方向、即ち、水路上流側に突設された櫛状のものであつて、右認定の作用効果を奏するものと認められる。
被告は、「本願発明における「すきとり部a」及び「掻上爪片b」の構成に関する特許請求の範囲の記載は、「バースクリーン1のバー間隙中に挿入されて走行される櫛状のすきとり部aと、該すきとり部aと反対方向即ち水路上流側に突設される櫛状の掻上爪片b」とあるのみであり、この記載によれば、バー間隙中に挿入されて走行する部分が「すきとり部a」であるから、バー間隙中に挿入されて走行しない部分は、全て「掻上爪片b」といわざるをえない。」旨主張するが、右特許請求の範囲の記載自体からも、「掻上爪片b」は該すきとり部aと反対方向即ち水路上流側に突設される櫛状の爪状の片であることが明白であり、その他の点について検討するまでもなく、被告の右主張は採用できない。
3 本件審決が、バースクリーンの渣除去装置において、バースクリーンで捕らえられたごみ類を、レーキなどのごみ類掻上片で掻上げる場合、ごみ類の絡みつきをよくし脱落防止を行うとともに、水面上に持ち上げられた際の脱水性を良好に行うため、掻上片をすきとり部と該すきとり部と反対方向即ち水路上流側に突設された櫛状の掻上爪片とで構成することは、周知の事柄(必要であれば、米国特許第三、一五二、〇七五号明細書参照。以下「第三引用例」という。)であると認定判断していること(請求の原因三4(三)参照)は当事者間に争いがなく、被告は、本件審決の右認定判断は正当であると主張する。
(一) そこで、まず第三引用例に、本件審決が認定した事項が記載されているか否かについて検討する(以下別紙第二図参照)。
(1) 成立について当事者間に争いのない甲第五号証によれば、第三引用例には、水路等に設置されたごみ収集装置の収集バー12に引つ掛かつて保持されているごみを掻き取つて除去するためのレーキ11のレーキ歯48が、その支持軸から下流側、即ち、収集バー側へ、間隔をおいて並んで上向きに湾曲した櫛歯状に設けられているばかりでなく、その反対側、即ち、支持軸から上流側へも、間隔をおいて並んだ丸棒からなる櫛歯状に設けられていることが認められる。
また、前記甲第五号証によれば、第三引用例にはレーキ11及びレーキ歯48の作用効果について、「レーキとカーテンが一緒に上昇する時、保持カーテンはレーキ歯48の前にごみ保持面22を形成する。従つて、ごみは保持カーテン10とレーキ歯48とレーキ11の側面とによつて形成されたごみ保持バスケツトの中に含まれるので、歯から落下しない。」(甲第五号証第三欄五三行から五九行。同号証訳文一〇頁三行から八行まで参照)との記載があることが認められ、右のように形成されたごみ保持バスケツトの底部にあたるのはレーキ歯48であるから、ごみを水面上に持ち上げた際の脱水性が良いことは自明である。
以上の事実は、その限りでは、本件審決の前記認定に沿うものである。
(2) 他方、前記甲第五号証(第三引用例。とりわけそのうちのレーキ11及びレーキ歯48の作用効果についての右(1)認定の記載及びFig1ないしFig5)によれば、レーキとカーテンが一緒にごみ処理シユート46まで上昇する時、レーキ歯48の前の保持カーテン10とレーキ歯48とレーキ11の側面とによつてごみ保持バスケツトが形成されるところ、レーキ歯48はその底部となり、保持カーテン10はその下流側、即ち、収集バー12側の側部となり、レーキ11の側面は他の三方、即ち上流側と左右両横側の側部となる位置関係にあること。レーキ歯48の支持軸から上流側に向かつて形成された櫛歯状の部分は、その先端が、レーキ11の側面のうち上流側側面の下端部に近接し、上流側と左右両横側をレーキ11の側面で囲まれた構造になつていて、その構造は、レーキ11が水中の収集バー12の底部まで降下させられた後巻き上げられ、レーキ歯48のうち、その支持軸から下流側へ櫛歯状に設けられている部分が水中で収集バーからごみ類を掻上げているときも、水面上でごみ類を持ち上げているときも変わらないことが認められる。
そうすると、第三引用例記載のレーキ歯48のうち、支持軸から上流側へ櫛歯状に設けられている丸棒からなる部分は、上流側と左右両横側のレーキ11の側面及び保持カーテン10とともに、支持軸から下流側へ櫛歯状に設けられている部分が水中で収集バーから掻上げて回収したごみ類又はたまたま下流側の収集バー12と上流側と左右両横側のレーキ11の側面で囲まれた中に流入したごみ類が、水中や水面上で脱落しないように保持し水面上のごみ処理シユートまで運び出す作用をするのみで、収集バーの上流側前面に引掛かつた水流中のごみ類を掻き取つてそれを水面上のごみ処理シユートまで運び出す作用をするものではない。したがつて、第三引用例記載のレーキ歯48のうち、支持軸から上流側へ櫛歯状に設けられている丸棒からなる部分は、本件審決が認定判断しているところの、構成として周知の事柄であるとする掻上爪片に該当するものとはいえない。
(3) 被告は、バースクリーンで捕捉されたごみ類をレーキによりすきとり水路外に搬出する場合、レーキには、少なくとも、バースクリーン間のごみ類をすきとる部分と、すきとり過程で蓄積されたごみ類を保持しながら搬出するための掻上部分とを、掻上部分がすきとり部と反対方向、即ち、水路上流側に突設するよう構成させることは、当然採用されるべき構成であると主張し、すきとり過程で蓄積されたごみ類を保持しながら搬出する作用をする部分を「掻上部分」と指称するが、本願発明と対比すべき掻上爪片は、前記2に認定した本願発明の櫛状の掻上爪片bの作用効果、特に、バースクリーンの上流側前面に引掛かつた水流中のごみを掻き取る作用効果を奏するものと解するべきものであり、したがつて、そのような作用効果を奏することがないところの、単にすきとり過程で蓄積されたごみ類を保持しながら搬出する作用をする部分を「掻上部分」と指称する被告の主張は失当である。
被告は、掻上部分がすきとり部と反対方向、即ち、水路上流側に突設するように構成されれば、突出状態による程度の差はあるにしても、バースクリーンに沿つてレーキが走行すると、バースクリーンの上流側の水面又は水中のごみ類をも掻上げることは、その構成から見て当然に期待しうる作用であるとし、第三引用例に記載されたレーキ歯48は、すきとり部と、水路の上流側に突設された櫛状の爪片とを具備しているのであるから、上流側に突設された櫛状の爪片は、すきとり部でバーの間隙からすきとつたごみ類の保持面としての機能の他に、程度の差はあつても、上流側前面に流れ着いたごみ類を掻上げる機能を有することは、当業技術者であればごく自然に理解できることであり、結局、第三引用例には、本願発明の櫛状の掻上爪片bの構成が記載されているというべきであると主張する。
しかし、前記甲第五号証によれば、第三引用例記載のレーキ歯48のうち水路の上流側に突設された櫛歯状の丸棒はその上流側と両横側がレーキ11の側面によつて遮られた構造となつていて、しかも、レーキ歯48はレーキ11の側面と一体的な構造で、レーキ11の側面を取り除いてレーキ歯48の水路の上流側に突設された櫛歯状の丸棒でごみ類を掻上げることはできないことが認められるから、第三引用例には、本願発明の櫛状の掻上爪片bの構成が記載されているということはできない。
(4) よつて、第三引用例に、掻上片をすきとり部と該すきとり部と反対方向即ち水路上流側に突設された櫛状の掻上爪片とで構成することが記載されているということはできない。
(二) 次に、甲第三〇号証に本件審決が認定した事項が記載されているか否かについて検討する。
(1) 成立について当事者間に争いのない甲第三〇号証(一九三三年(昭和八年)五月二三日特許の米国特許第一、九一〇、八〇三号明細書)によれば、
<1> 甲第三〇号証には、水路等に設置されたごみ収集装置のトラツシユ・ラツクのバー14に引掛かつているごみを除去するためのレーキが記載されており、その爪13がトラツシユ・ラツクのバー14の間の空間に進入しごみをすきとるものであるが、爪13は細長い金属シヤフトにより形成されるレーキヘツド12を貫通するようにレーキヘツド12の両側へ同じ長さだけ直角方向に櫛歯状に突出して固定されていること、
<2> 右レーキヘツドの両端に形成されたアーム軸15に回転自在にかつ摩擦手段を介して車輪16が嵌装されており、巻き上げ装置によつてレーキを上下させると、車輪16はラツクのバー上を回転走行し、その回転がレーキヘツドに伝えられレーキヘツドも回転するが、ストツプ手段によりレーキヘツドはどちらの方向へも一定の限定された角度だけ回転することができ、それ以上は車輪が独自に回転し、レーキヘツドはストツプ位置を保持すること、
<3> レーキがラツクの上端部にあつて下降を開始しようとするときは、爪はラツクに対しほぼ直角の位置にあるが、わずかに下降し車輪16がラツクのバー上を回転走行し、その回転がレーキヘツドに伝えられると、爪はラツクとほぼ平行の位置まで回転した後、車輪がラツクの下端に至るまでその位置を保持すること、したがつて、レーキがラツクの下端部にあつて上昇を開始しようとするとき、爪はラツクに対しほぼ平行の位置にあるが、わずかに上昇し車輪16がラツクのバー上を回転走行し、その回転がレーキヘツドに伝えられると、爪はラツクとほぼ直角の位置まで回転した後、車輪がラツクの上端に至るまでその位置を保持すること。
<4> したがつて、レーキの上昇中は爪がラツクとほぼ直角の状態になり、ラツクのバー14の間の空間に進入しごみをすきとるとともに、ラツクの反対側即ち上流側にも爪がほぼ直角に突出するが、レーキが下降中は爪がラツクとほぼ平行の状態になり作用しないこと。
<5> レーキの上昇中、ラツクのバー14の間の空間に進入しごみをすきとる爪全体に対し下方に働きレーキヘツドをその方向へ回転させようとする力は、反対側の爪全体に対し下方に働きレーキヘツドをその方向へ逆転させようとする力により相殺される他、前記ストツプ装置に阻止されてレーキヘツドをそれ以上回転させることはできないが、ラツクと反対側即ち上流側に突出する爪全体に対し下方に働きレーキヘツドをその方向へ回転させようとする力は、ラツク側の爪全体に対し下方に働きレーキヘツドをその方向へ逆転させようとする力及びアーム軸15と車輪16の摩擦力により相殺されるだけであるから、三つの力の大きさの如何によつては、レーキが上昇中であつてもレーキヘツドが上流側の爪が下がるように回転し、レーキヘツドの爪が保持していたごみを水中に落とすように作用する可能性があること、
が認められる(以上別紙第三図参照)。
(2) 右認定の事実によれば、甲第三〇号証記載のレーキにおいては、レーキが上昇中には、ラツクと反対側即ち上流側にもラツクとほぼ直角に櫛歯状の爪が突出するのであるから、右<5>に認定のとおり三つの力の大きさ如何によつてレーキヘツドの爪が保持していたごみを水中に落とすような場合以外にはそのような上流側に突出した爪がラツクの上流側前面に引つ掛かつたごみを掻上げる作用効果を奏することが示唆されていたものと認められる。
(三) さらに、甲第三一号証に本件審決が認定した事項が記載されているか否かについて検討する。
(1) 成立について当事者間に争いのない甲第三一号証(一九五〇年(昭和二五年)一〇月三日特許の米国特許第二、五二四、三〇四号明細書)によれば、
<1> 甲第三一号証には、水路等に設置されたごみ収集装置のトラツシユ・ラツクのバー2に引つ掛かつているごみを除去するためのレーキが記載されており、レーキ爪8がトラツシユ・ラツクのバー2の間の空間に進入しごみをすきとるものであるが、この爪8は複数であつて、細長い管により形成される軸7を貫通するように軸7の両側へそれぞれ直角方向に櫛歯状に突出し、軸7に固定されていること、軸7は約九〇度の限度で回転することができ、一方の回転の限度位置では爪8がラツクにほぼ垂直となりラツクにかかつたごみにくいこみ、他方の回転の限度位置では爪8がラツクにほぼ平行となること、爪8がラツクにほぼ垂直となつたときにラツク側に突出する方の爪8の先端はゆるく上向きに反つてとがつており、上流側に突出する方の爪8の先端は丸棒のままほぼ直角に上向きに折り曲げられていること。
(2) 右に述べたレーキの上部の第二の軸15には摩擦手段を介して滑車16が嵌装されており、この滑車16を通したケーブルをホイスト装置22で巻き上げるとレーキはラツクバー上を上昇し、ホイスト装置を逆転させるとレーキは下降すること、前記ケーブルを巻き上げあるいは巻き戻すことにより回転する滑車16が、軸15したがつてクランク18、連結棒19、クランク20を経て軸7(前記のとおり、爪8が固定されている。)を回すので、レーキが上昇した状態からケーブルが巻き戻されるとレーキがラツクバー上を下降するとともに、軸7は爪8がラツクにほぼ平行の限度位置に並ぶまで回転し、それ以上は滑車16が独自に回転し、爪8はその位置を保持すること、レーキが下降した状態からケーブルが巻き上げられるとレーキがラツクバー上を上昇するとともに、軸7は爪8がラツクにほぼ垂直な限度位置になるまで回転し、それ以上は滑車16が独自に回転し爪8はその位置を保持すること、
<3> したがつて、レーキが下降中は爪8がラツクとほぼ平行の状態になり爪8はごみをすきとる作用もしないが、レーキの上昇中は爪8がラツクとほぼ直角の状態になり、爪8はラツクのバー2の間の空間に進入しごみをすきとるとともに、ラツクの反対側即ち上流側にも爪8がほぼ直角に突出するところ、この爪8の上流側には、水平部材4、斜めのフレーム材5、及びそれらの間を縦に結んで補強する複数の平行棒6からなるレーキの側枠があること。
<4> レーキの上昇中、爪8のうちラツクのバー2の間の空間に進入しごみをすきとる作用をする爪8全体に対し下方に働き、軸7をその方向へ回転させようとする力は、反対側の爪8全体に対し下方に働き、軸7をその方向へ逆転させようとする力により相殺される他、前記のとおり回転の限度があるため軸7を右限度以上に回転させることはできないが、ラツクと反対側即ち上流側に突出する爪8全体に対し下方に働き、軸7をその方向へ回転させようとする力は、ラツク側の爪8全体に対し下方に働き、軸7をその方向へ逆転させようとする力及び第二の軸15と滑車16の摩擦力により相殺されるだけであるから、三つの力の大きさの如何によつては、レーキが上昇中であつても軸7は、上流側の爪8が下がるように回転し、軸7に固定された爪8が保持していたごみを水中に落とすように作用する可能性があること、
が認められる(以下別紙第四図参照)。
(2) 右認定の事実によれば、甲第三一号証記載のレーキにおいても、レーキが上昇中には、ラツクと反対側即ち上流側にもラツクとほぼ直角に、先端が上向きに折れ曲がつた櫛歯状の爪が突出するのであり、そのさらに上流側に前記(1)<3>認定のとおり水平部材4、斜めのフレーム材5、及び複数の平行棒6からなるレーキの側枠があるものの、右(1)<4>のとおり三つの力の大きさ如何によつてはそのような上流側に突出した爪がラツクの上流側前面に引掛かつたごみを掻上げる作用効果を奏することが示唆されていたものと解する余地があることが認められる。
(四) 以上認定の事実によれば、第三引用例には、掻上片をすきとり部と該すきとり部と反対方向即ち水路上流側に突設された櫛状の掻上爪片とで構成することが記載されているということはできないが、甲第三〇号証には、そこに記載されたレーキにおいては、一定の限度内で、上流側に突出した櫛状の爪がラツクの上流側前面に引掛かつたごみを掻上げる作用効果を奏すること、即ち、掻上片をすきとり部と水路上流側に突設された櫛状の掻上爪片で構成すること、が示唆されていたものと認められ、さらに、甲第三一号証にも、そこに記載のレーキにおいて、一定の限度内で、上流側に突出した櫛状の爪がラツクの上流側前面に引掛かつたごみを掻上げる作用効果を奏すること、即ち、掻上片をすきとり部と水路上流側に突設された櫛状の掻上爪片で構成することが示唆されていたものと解する余地があることが認められる。
しかし、甲第三〇号証及び甲第三一号証の前記のような刊行の時期を考慮しても、甲第三〇号証及び甲第三一号証の右認定のような記載をもつて、本件審決が認定判断したように、「バースクリーンの渣除去装置において、バースクリーンで捕らえられたごみ類を、レーキなどのごみ類掻上片で掻上げる場合、ごみ類の絡みつきをよくし脱落防止を行うとともに、水面上に持ち上げられた際の脱水性を良好に行うため、掻上片をすきとり部と該すきとり部と反対方向即ち水路上流側に突設された櫛状の掻上爪片とで構成することは、周知の事柄である。」と認定することはできない。
また、甲第三〇号証及び甲第三一号証のその余の部分並びに第三引用例その他本件にあらわれた全証拠によつても、本件審決の右認定の事項が周知であることは認めることができない。
よつて、右事項が周知であるとする本件審決の認定判断は誤りであると認められる。
三 原告ら主張の認定判断の誤り第3点について
1 本願発明のごみ類掻上片2が備える掻上爪片bは、すきとり部aと反対方向、即ち、水路上流側に突設された櫛状のものであり、その作用効果は、バースクリーンの上流側前面に引掛かつた水流中のごみを掻き取つて、それらを水上に運び出して、シユート20へ投入し、エプロンコンベア21上に落下搬出させるものであり、櫛状の掻上爪片bで水中を掻き取られる過程及び水面から上へ持ち上げられる際ごみ類の絡みつきがよく、ごみ類の脱落を防止でき、水面上に持ち上げられたごみ類の脱水が良好に行えると共に、シユートへの反転投入の際には滑り落ちが容易であるという点にあるものと認められることは、前記二1及び2に認定したとおりであり、しかも、右作用効果は後記のとおり第一引用例、第二引用例及び本件審決のいう各周知の事項から予測することのできない格別のものと解するのが相当である。
2 本件審決が、本願発明の奏する作用効果は、前記の第一引用例、第二引用例及び本件審決が認定した各周知の事柄から予想される範囲内のものであつて格別顕著なものであるということができない旨判断していること(請求の原因三4の(五)参照)は当事者間に争いがない。
3 しかし、成立について当事者間に争いのない甲第三号証(一九三八年(昭和一三年)八月三〇日特許の米国特許第二、一二八、三四六号明細書、第一引用例)及び甲第四号証(一九六五年(昭和四〇年)六月二二日特許の米国特許第三、一九〇、四四八号明細書、第二引用例)によれば、第一引用例及び第二引用例には本願発明のごみ類掻上片2が備える櫛状の掻上爪片bが奏する前記1認定のような作用効果を予想させる記載がないことが認められ、本件審決が周知の事柄と認定したチエーンローラを併設したチエーンコンベヤーそれ自体及びこの種のチエーンコンベヤーにおいてその走行を案内支持するガイドレールを走行路に沿つて設けること(当事者間に争いのない請求の原因三4の(一)参照)からは前記1認定のような作用効果を予想することはできず、さらに、前記二(原告ら主張の認定判断の誤り第2点について)で判断したとおり、本件審決が相違点(三)についての判断(請求の原因三4の(三)参照)において周知の事柄であるとした認定判断は誤りであるから、結局、本願発明の作用効果のうち、ごみ類掻上片2が備える櫛状の掻上爪片bが奏する前記1認定のような作用効果が、第一引用例、第二引用例及び本件審決が認定した各周知の事柄から予想される範囲内のものであつて格別顕著なものであるということができない旨の本件審決の認定判断は誤りである。
四 よつて、その余の点について判断するまでもなく、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に、本件審決の取消を求める原告らの本訴請求は正当であるから認容することとする。
〔編注1〕本願発明の要旨は左のとおりである。
水路に備えられるバースクリーン1に沿つてレーキなどのごみ類掻上片2を無端状のチエーンローラ3を介して走行可能に配備した除塵装置において、前記チエーンローラ3を案内保持するようにチエーンローラ3の走行路に沿つて形成したガイドレール4を備え、該ガイドレール4は下端を反転部として折り返される彎曲部で連続させてチエーンローラ3が転向できるようにすると共に、このチエーンローラ3の少なくとも復路がバースクリーンの下流側に配備されて、前記ガイドレール彎曲部にごみ類掻上片2のある無端状のチエーンローラ3を掛装し、且つ水面上に設けた駆動輪5にチエーンローラ3を掛けてチエーンローラ3を駆動輪5で無端状に運行するように構成し、しかも前記ごみ類掻上片2が、前記バースクリーン1のバー間隙中に挿入されて走行される櫛状のすきとり部aと、該すきとり部aと反対方向即ち水路上流側に突設される櫛状の掻上爪片bとを備えたレーキであつて、該掻上片2の裏側に備えた支持部材7にアタツチメント71を介してチエーンローラ3を着脱自在に設けたことを特徴とするスクリーン渣除去装置。(別紙第一図参照)
〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。
第一図
<省略>
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第二図
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(以下省略)